新しい通貨の可能性「知価市場通貨」

気を取り直して3月25日の「信頼通貨」についての続き・・・


そこでの暫定的な結論は以下の通り。

  1. 通貨というのはそもそも信頼が前提になっている
  2. 国家に対する信頼か(旧通貨)、個人あるいは特定の集団に対する信頼か(新通貨)
  3. ある通貨を得る事、持つ事自体で信頼を表せるんでは?
  4. お金に色をつける(得る手段、使い道の制限)
  5. 新しい通貨は「情報」の含まれる通貨?

まず中途半端に終わった5の「情報の含まれる通貨」について改めて考えた事。
お金とは「価値のメディア」と考えたのだが、よく考えるとそこには既に「情報」もかなり含まれている。
例えばそこにはデザインとしてその国を「象徴」する人物なり生物なり建造物なりが描かれている。これは貨幣に対する信頼の根拠、流通する範囲が国家にあるゆえ、その国ごとの「差異を表す情報」と考えられる。
そして年号。これは必ずしもあるというわけではないようだがデザインの変更まで考えれば、時代、歴史を表す情報である。
(ちなみに日本の紙幣の「通し番号」はおおよその製造時期、製造した印刷所が分かるようだが・・・この「通し番号」は「個性」を表している。実は一つとして同じものはないのだ。)
更にもう一つ付け加えると偽札と見分ける為の様々な工夫もやっぱり情報。


というわけでよくよく考えてみるとお金には結構たくさんの情報が含まれている。
既に現在流通しているお金に「信頼」も「情報」も含まれているので新しい通貨を考える上でのもう一つ別なアプローチが欲しい。(実は情報通貨というのを考えていたんだけど)
そこで4に関連したものとして前回の記事に追加したR30::マーケティング社会時評さんとこの『色の付いたおカネの話』が非常に興味深い。
R30さんもどうやらお金に色を付ける事を考えておられたようだ。そこでお金に色を付けた先駆的な例としてヨドバシカメラの「ポイントシステム」を上げている。

日本でポイントシステムを「色の付いたおカネ」として大々的にぶち上げて認知させた最初の企業は、たぶんヨドバシカメラだ。それまでもアニメ「ちびまる子ちゃん」などに出てくるように、ポイントサービスというのは全国の商店街などで行われていた。でもそれってたいていは買い物で集めたポイントで商店街のくじ引き抽選に参加できますよ、という程度のもので、ポイントそのもので再びその商店街で商品が買えますというものではなかった気がする。

 これに対し、ヨドバシは10%の値引きを現金ではなく自社での買い物にしか使えないポイントにすることで、(1)割引した分が自社以外の消費に使われるのを防ぎ、(2)顧客のリピート率を高め、(3)さらに現金値引きに比べて利益率を高めることに成功した。

なるほど確かにこの「家電製品の購入だけに使えるおカネ」としてのポイントシステムは、得る方法と使い道に制限の加えられた「色の付いたお金」である。これは前回例として考えた「環境通貨」と基本的には同じである。
それではこの「色の付いたお金」の「色」というのはいったい何を表しているのか?
それは多分「市場」である。ある特定の市場のみに流通する通貨、という意味だ。


と考えてみたらこの「市場」というキーワードは全てのお金に当てはまる属性である事に気づいた。円は日本という市場で流通するお金で、地域通貨はまさしく地域という市場、ヨドバシカメラのポイントシステムは業界という市場、全部基本的には色付き、制限付きのものである。
だとすれば新しい通貨を考える上でキーになるのは

  • どんな制限によって新たな「市場」を創造するか

というあたりになりそうである。つまり新しい貨幣を創造する事=新しい市場を創造する事、になるわけである。


で、オレがイメージしている新しい市場を例えで出した「環境通貨」で考えてみる。
この「環境」というものが指し示しているのは、
「環境を悪化させる事は悪い事。これからの世界は環境を良くする事が最も大事な価値である」
という価値観、世界観を表している。そしてこの価値観を共有する人々が「環境通貨」を積極的に得たり使ったりの流通、循環させる事によって「市場規模」を拡大。この市場規模の拡大によって「環境通貨」自体の価値を高める。こういった行動を促すイメージだ。
で、ここで市場として想定されているのは「ある価値観を共有している人の集まり」としての「コミュニティー」である。これが新しい市場としてオレが考えているもので、地理的な制限でも業界的制限でもない、価値観による制限、を加えられた通貨(ポイント)という事になる。




で、これをポイントシステムと絡めて考えたら『ぼくたちの洗脳社会』の中で紹介されていた堺屋太一著『知価革命』の主張に繋がってきた。いわく


>「これからの商売で大切なのはモノそのものではなく、それに付加される知的価値である」


・・・・・。この「付加される知的価値」とはある価値感を表すポイント、になるんじゃないだろうか?
例えば環境ポイントの付く商品、のようにあらゆる商品に何らかの価値感(とその市場)を表すポイントが付くようになる。どんなポイントが得られるのか?によって人はモノを選ぶようになる。これが商品に付随する知的価値、というものになりうるかもしれない。


というところで一先ず限界。とりあえず新しい通貨のネーミングとして、知的価値によって新たな市場を造り出す通貨「知価市場通貨」というのを提案しておきたい。