ブレイン=コンピュータ・インターフェース

という新しい技術、概念がある。
これは文字通り、脳とコンピュータを直結するインターフェース(回路)というような意味。
俺がこれを知ったのは確かcatfrogさんとこのエントリでこの時はへーそんな技術があるのかー程度だったんだけど24日の夜にNHKでやってた『立花隆徹底対論 サイボーグ革命 〜脳とマシーンの融合〜』という番組見てかなりの衝撃。いや実際映像としてみるとリアルさが全然違う。この技術がもたらすモノはどうもハンパなもんではない、だけでなくその未来は決して遠い世界でもないのだという。もう結構すぐそこまで来てしまっているようなのだ。
ということで凄く色々なことを考えさせられ刺激されたので[サイボーグ]カテゴリ作ってこれから色々書いていくことにする。


まずこの番組については東京大学立花隆ゼミ制作による科学情報総合サイト「SCI(サイ)」というとこで詳しくまとめられているのでこちらを参考。
http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/sci/project/cyborg/


ブレイン=コンピュータ・インターフェースについてのhotwiredの記事。
http://hotwired.goo.ne.jp/news/technology/story/20030801301.html
http://hotwired.goo.ne.jp/news/technology/story/20040116301.html
http://hotwired.goo.ne.jp/news/technology/story/20050118301.html


関連してそうなx51.orgの記事。
http://x51.org/x/05/06/2437.php
http://x51.org/x/05/04/1939.php
http://x51.org/x/05/01/0427.php



機械と体(脳)の融合

絵として衝撃があったのは頭にソケットみたいのが取り付けてある人の映像。それはまんまマトリックスのあれを想起させる。盲目の人が専用のカメラ付きの眼鏡をかけ、そのカメラの映像の電気信号が腰に付けた機械に流れそこで「脳が翻訳できる電気信号」に変換されそれが頭=脳に刺さったプラグへと直接流される、というそういう機械を取り付けた人の映像なんだけど、これはつまり何らかの映像を目を使わず直接「脳」で見ているということになる。今のとこはまだちらちらとした光が見えるという程度なんだけども・・・。
あるいはネズミラジコン。
http://hotwired.goo.ne.jp/news/technology/story/20020508301.html
ここでも取り上げられてるけど基本的なシステムは

チェイピン教授のチームは、5匹のラットに電極と電池を収めたバックパックを装着した。ノートパソコンで信号を送ると、電極がラットの脳を刺激し、指示された方向へ走るよう合図する。その後、脳内の快楽中枢を刺激して報酬を与える。

というようなものでラジコンを操るようにネズミを遠隔操作でコントロールしてる映像。
これが恐ろしいのはなんといってもその対象がネズミでなく犬、猫もしくは人間だったら・・・と容易に想像できるとこ。これはつまりブレイン=コンピュータ・インターフェース(以下BCI)は脳がコンピュータを操作する、という一方通行の話ではないってことを意味する。身体の中の神経を流れる脳が翻訳できる(そして筋肉が翻訳できる)電気信号とコンピュータすなわち人工的な電気信号との間の翻訳が可能になった、ということのようだ。


道具は身体の延長である、とか言われたりする。だけれども脳が何かをアウトプットするというのは身体を動かす事と同義だった。

  • 脳→体→物

そこにはこういう流れがありこれが動かしがたい前提だった。脳へのインプットも同様であくまでそれは身体を通して行われていた。

  • 物→体→脳

しかしこのBCIは脳と物を直接繋いでしまうということになるわけなので

  • 脳⇔物

ということになる。
従ってそこで起こっていることは体と物(機械)の融合=サイボーグ化である、というのが番組の趣向であり文脈。「⇔」の部分がBCIなわけだ。
なるほどまさしくそこで繋がっている「それ」は物でも道具でもなく新しい体と言った方がいい感じだ。押井守は「義体」と呼んでいるんだけどとにかく体と物(機械)との境目が殆ど無くなってしまうことになる。
・・・わけだけどただこの見方にはおそらく脳中心主義とでもいうようなバイアスが掛かっていて(あるいは掛かりやすくて)上の「脳−体−物」の関係にはもう一つ、そこで物と融合してるのは脳だという見方もありえる。

  • 体⇔機械化した脳

このことをネズミラジコンの例は示唆しているんだと思う。普通例えば究極のサイボーグとしてイメージするのは「脳以外を完全に機械化する」というイメージなわけだけど、逆に「脳だけを完全に機械化したサイボーグ」だって十分ありえるのだ。この問題がややこしいのは結局脳だって体の一部に他ならないということなのだろうと思う。
(とここで俺が思い出したのは岩明均のマンガ『寄生獣』。寄生獣は主人公のように右手に寄生するのかそれとも頭に寄生するのか、みたいな感じ。しかもそれは不定形でどんな形にもなることができ、マンガの中での定義では「考える筋肉」ってことになってたわけで・・・とこの話と妙にリンクするとこが多い)


とにかくこの話はホントに興味深い。脳と物とを直接繋ぐという発想はちょっと考えを進めると、技術の応用とかまで考え出すとあっという間に妄想的世界が広がってきてしまう。しかもリアルに。例えば日本型BCIというのは頭にプラグを指したりする必要も無くヘッドギアみたいのをかぶるだけでサイコキネシスのように機械を動かせる、というものなんだけどこれがどうやら5年後くらいには完成する予定のようだ。これが完成するだけでもちょっととんでもないことになりそうだけど可能性はまだまだこんなものでなくて、アメリカではこの技術を軍事利用するのに物凄い額の予算が組まれて研究されてたりしてそれがまた凄いことになってたりして・・・
というとこで一先ず以上。