情報と媒体

前回までの三回分の記事は養老孟司著『人間科学』の主張に基づいてあるいはそれを応用して書いたのだけど、実はこれ今まさに読んでる途中の本だったりする。現在ちょうど半分ぐらい。だから色々曲解や誤解もあると思われるのでその辺差し引いて読んでもらえるとありがたいです。
そういうわけで自分の中でもまだまだ未消化なところが多分にあるのだけど、とにかくこれは物凄く重要な本になりそうなんである。
現在は「情報化社会」の時代であるという。だとしたらそもそも「情報とは何か?」という前提が重要になってくる、はず。そしてこの本のテーマがまさしく「情報系」に関するものなのである。前回ちらっと書いたのだが子曰く情報系には二つの主要な軸があるという。

  1. 遺伝子(情報)−細胞(実体)
  2. 言葉(情報)−(実体)

かつて養老先生は〈人工−自然〉という優れた二分法を提示されたのだが、この新しい〈情報−実体〉という二分法はこれから起こる様々な出来事を理解する上で極めて有効なものになる予感がする。特にずっと気になっていた、そしてブログ界で常に話題になっている「マスメディア(既存メディア)とネットメディア(ブログ)の関係性」を理解する上で役に立ちそうでなのである。というか前回までの〈ストック−フロー〉という概念と絡めて考えていたら色々繋がってきた・・・のだがなんせ未消化なので中々統一的に書けそうにない。
断片的になるかもですがしばらくこのテーマで書いてみたいな〜と思っている次第。(「しばらくまったりやる予定」はどこいってしまったんだろう・・・)




まず改めて〈情報−実体〉を〈ストック−フロー〉という概念とともに整理しておくと、


《情報》−遺伝子−言葉−固定化−ストック−《人工》
《実体》−細胞 −脳 −流動性−フロー −《自然》


という感じになるんじゃないかと思う。
けっしてきれいに分かれているわけでもない。(特に〈人工−自然〉をここに加えていいのかはまだ謎)だが基本的な世界への理解としてこれらは極めて有効な”見なし”になるのではないかと思っている。
で、これを前提に既存メディアとネットメディアについて考えたのだが・・・既にオレの中では結論が出てしまっている。すなわち


既存メディア (主に新聞) =情報属性
インターネット(主にブログ)=実体属性


前々回『ブログの記事は「情報」ではない』というのを書いたがこれはブログ(ネット)を新聞(既存メディア)と対置した上での話、なのである。つまりは「関係性」に注目した捉え方だという点に注意が必要なのだが・・・ここでの「実体」を「媒体」と言い換えてみるとより事情ははっきりすると思う。要するに

  • 新聞という形に「固定化」された「情報」はネットという「流動性」の高い「媒体(メディア)」に乗る事で伝わる

これが〈情報−実体(媒体)〉を元に考えると出る結論である。少なくともこの二つの関係性においてはメディアとはネットの事、なのだ。
ただ・・・多分今の時点ではこれですんなり納得する事はできないと思う。それはしょうがない。実はオレもまだまだよく分かってないわけなので(笑)ただちょっと「流動性の高い媒体」についてだけ補足しておきたい。


前にもちょっと書いたのだが、音声によるコミュニケーションにおいてこの声、音が媒体としているのは空気である。空気の「振動」によってだ。空気は極めて流動性が高い、からこそ媒体となり得ている。
もう一つ。リチャード・ドーキンスによる『利己的な遺伝子』説によれば、生物の体は遺伝子の乗る船である。この生命観は、遺伝子という情報は生物の体(細胞)を媒体にして次世代に伝わっている、という風に言い換える事ができると思う。やはりここでの生命の体も極めて流動性が高い、からこそ媒体となり得ている。(ちなみにもちろん?本は読んだ事ないのです笑)


つまりはっきりしている事は「情報」と対置された時の「媒体」は流動性が高くなければならない、という事なのである。固定化しているものは媒体となり得ない。
これは我ながら意外だったのだが考えてみるとそうだとしか思えない。新聞という「紙」媒体は一見すると止まっているように見える。実際「紙」は極めて固定化の強いものなのだが(だからこそネットに対置する事ができるわけで)ここでの媒体の概念で考えれば、新聞における媒体とは紙ではなくむしろ「インク」なのではないだろうか? 我々は紙を読んでいるのではなくインクを読んでいる・・・と考えられるのでやっぱり流動性の高いものが媒体なのだ。間違いない。


というわけで結論だけはでている。でも中身はまだ全然出来ていない。のでこれから式をでっち上げていく予定(希望)




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5/3追加CNET Japan Blog - 江島健太郎:情報・時間・コミュニケーション、そして意識(4)
id:Ohgyokuさん経由。前半部分はほぼ養老孟司著『人間科学』の非常に分かりやすい解説になってます。でもってこの4回分のシリーズはすごく分かりやすくかつツボでした。オモシロ!